神奈川県立厚木東高等学校第71回卒業証書授与式 校長式辞

 

平成31年3月2日

厳しかった冬の寒さもようやく緩みはじめ、庭園の紅白の梅の花や、木々の芽吹きに、春の息吹が感じられる季節となりました。

本日、ここに、神奈川県立厚木東高等学校第71回卒業証書授与式を挙行するにあたり、ご多用中にもかかわらず、多くの御来賓の皆様の御臨席を賜りましたことに深く感謝申し上げます。併せて、多くの保護者の皆様のご参列をいただきましたことに、心より御礼申し上げます。

 

ただいま278名の卒業を認めました。第71期生の皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。様々なことにチャレンジし続けた3年間を経て、大きな自信と誇り、達成感を抱いて、今日の日を迎えたことと思います。

また、保護者の皆様におかれましては、担任の呼名に、凛として立つお子様の晴れの姿をご覧になり、今日の日を迎えられたお喜びと感慨も、ひとしおのことと拝察いたします。これまでのご支援ご協力に対し、改めて心より感謝申し上げます。 

 

3年前入学式で今田前校長先生はみなさんに「夢を持ってほしい」というお話をなさいました。以来3年間皆さんは、勉学に部活動に学校行事にと、仲間と共に切磋琢磨しながら、真摯に自己を見つめ、激変する社会にあって、自分は何をして生きていくのか?という、自立への問いに答えを求めて、模索の旅をしてこられました。途中、困難や挫折もあったかと思いますが、それらもすべて含めて、皆さんが積み重ねた努力に心からの敬意を表します。

 

さて、本日卒業の善き日にあたり、皆さんに一つの言葉を送りたいと思います。

みなさんは昨年10月ノーベル生理学・医学賞を受賞した方を憶えているでしょうか? ガンの治療に使われる免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の開発につながる研究をした京都大学の名誉教授、本庶佑(ほんじょたすく) さんです。

彼はノーベル賞の賞金5,000万円余りを原資にして基金を立ち上げ、知人からの1億円の寄付も得て、母校の若手の研究者に、給与と研究費を長期的に支給する仕組みを創設しました。この基金を本庶先生は「こころざし有る:「有志」」と書いて「本庶佑有志基金」と名付けたのですが、これは「志が有ればいつかは成る」という意味の四字熟語『有志竟成』から名付けたそうで、若い研究者達に頑張ってもらいたいとエールを送る気持ちで、そう名付けたということでした。

 

このことを新聞記事で読んだ時、私はこの『有志竟成』 という4字熟語をちょうど学んだところでしたので、大変驚きました。しかも本校で学んだばかりだったのです。

この言葉に出会ったのは本校の弓道場でした。弓道場には名前がついていて入口の看板に素晴らしい文字で「志成(こころざしがなる)弓道場」とあります。これがどんな意味なのか調べたところ、後漢書耿?伝(ごかんじょこうえんでん)にある、有志竟(ゆうしきょう)(せい)』つまり「志ある者は 事(つい)に成るなり」の志と成るの2文字を取って、平成2年の弓道場大改修の際に、「志成弓道場」と名づけられていたということがわかりました。 以来平成の30年間、志成弓道場は、様々な大会や練習、また授業の場として、生徒達の‘志が成る’よう、励まし、見守ってきてくれたのです。

 

ガン治療の新薬を発見するというのは、大海原から一本の針を拾い出すかのような、気の遠くなる地味な基礎研究作業の連続です。本庶さんも大切にしている、また本校にも縁の深いこの『有志竟成』という言葉を、本日学び舎を巣立たれる卒業生の皆さんに送りたいと思います。

 

 皆さんが生きていく未来の社会には、不安の種はたくさんあります。近隣諸国との政情不安、絶対に起こしてはいけない戦争の恐怖、急速な情報化による社会構造の変化、一部の人が富を集める格差社会、AIに仕事を奪われる日が近いのではとの心配、地球温暖化や世界の人口増による食糧危機、持続可能な社会に向けて進まないごみ問題、自然環境破壊などなど、数え上げればキリがありません。

しかし、不安を数えるのか希望を数えるのかは、まさに自分次第です。本庶さんのような研究者のたゆまぬ努力により、ガンの治療薬も近い将来に開発されるでしょう。エイズや白血病、認知症など多くの病もその治療法が開発され、新たな代替エネルギーの利用技術も出てくるでしょう。自動運転の発達で交通事故が無くなり、ドローンや空飛ぶ車で物流にも革命的変化がおこるでしょう。

それぞれの分野で、それぞれの人が頑張っています。未来にはたくさんの希望があると信じようではありませんか。そして、その未来の世界を創っていくのは正にここにいる皆さんなのです。

 

これから皆さんが歩く道は決して、平坦なものではないかもしれません。

人生の旅の途中では多くの困難に直面することでしょう。しかし困難なくして成長はないこと、苦難をくぐり抜けてこそ、より大きな人間に成長していくことができるということを、皆さんは厚木東での3年間ですでに学んでいます。

 

『有志竟成(ゆうしきょうせい)』 −「強い意志でものごとを進めるならば、途中で困難なことがあっても最後には目的を達成できる。」「一見して困難のように見えても、固い信念を以て事にあたれば遂には実現される。」

 

皆さんは希望の種です。皆さんを大切に育んでくださったご家族の、東高の、厚木の、神奈川の、日本の、いや世界の希望の種です。厚木東で経験した様々なチャレンジを糧に、「変化を恐れず挑戦し続ける大人」になってください。そして、どうか、懸命に希望の種を育て、美しい倖せの花を咲かせてください。

 

卒業はゴールではなくスタートです。だからこれからも、自ら学び、自ら考え続けてほしい。どうしたら自分や自分の大切な人たちをもっと幸せにすることができるのか? 自分の好きなこと得意なことで、どうしたら社会の役に立てるのかを。

 

私たち自身はと言えば、教員という「人を育てる」尊い仕事に携わらせていただき、皆さんのお陰で、自らも成長できるという本当にありがたいお役目をさせていただいています。担任団をはじめとして私たち全教職員が皆さんの成長していく姿を目撃し大きな倖せをいただきました。代表してお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 

『平成』もいよいよも終わりを告げ、新たな時代の幕開けが迫っています。

厚木東高校もまた変化を恐れず挑戦し続けます。そして厚木東高校はこれからもずっと、皆さんの母校です。いつの日か皆さんがそれぞれの「志を成す」ことを願い、ずっとずっと、皆さんを応援し続けます。

 

『有志竟成』   卒業おめでとう。

「フリーイラスト...」の画像検索結果35代校長 村越 みどり